AI搭載のおもちゃが子供に与える影響とは

AIが子供向けのおもちゃにも利用されるようになってきた。これまでもペットロボットなどにも活用されつつあったが、価格が3万円を切るようなものが出て来たことで、クリスマスプレゼントとしても注目されている。また、情操教育やSTEM教育にも役立つとされている。今回はAI搭載おもちゃの最前線を紹介する。

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COZMOではどのようにAIが使われているのか

今回は子供用のおもちゃで人工知能を搭載している例を紹介する。これまでも一定の反応を返すAIBOの様なペットロボットや、センサー情報と組み合わせて自動で掃除を行うルンバのようなものはあった。最近では会話ができるようになりつつあり、そこにAIを利用している例が増えている。とはいえ、まだまだ数が少なく、AIとしての性能もそこまで高くないのが実情だ。

だが、それでもアメリカで2016年に発売されて以来、驚異的に売れているおもちゃがある。それはAnki社が製造・販売している「COZMO」だ。日本ではタカラトミーが2万6980円(税別)で販売をしている。

COZMOは全長約7cm、重さ151.5gというコンパクトな、手のひらに載るサイズのロボットである。車輪を使って自走式で動く事ができるのが特徴だが、何と言ってもその動きにはAIが活用されている。AIはカメラに映っている人物の顔認証を行い、人物の顔を見分けることができる。また状況に合わせて表情を変える。喜んだり苛立ったり悲しんだりと、目の部分をアニメーション表示して表情を変えている。ユーザーとのゲームに勝つと喜び、負けると悔しがるなどの単純な感情表現を行う様になっている。

その他、付属しているパワーキューブを同時に2つまで動かす事ができるが、3つ積んでおくとカメラでそれを判断し、わざと積まれたブロックを崩して落とすという動作も行う、ただし、これらが画像認識部分はAIであると考えられるが、崩して落とす行動自体が単純なプログラムなのか、それともAIを使ってやっているのかは、はっきりとはわからない。

COZMOは何ができるのか

では、自走式でAIを積んでいるというCOZMOにはどの様なことができるのだろうか。幾つかその機能を紹介しよう。

まずCOZMOの特徴は、AIが環境を自動で認識し、人間が関わらなくても勝手に行動して学習する点である。もちろん持ち主との間で何らかのやりとりをすればするほど、AIはより人間との関係性を強く学習する。が、放っておいても自分で学習・進化するため、おもちゃやロボットというよりはペットの小動物という方が感覚的には近い。

先ほど書いた通り、自分で学習をするが、持ち主との関係性で性格も変わるようである。基本的にはやんちゃな性格をしているが、ハイタッチを要求してきたときに相手をすると、気を許してくれるような性格になる。一方、振り回したりすると怒りを表現し、そのような対応を持ち主が続けると性格が悪くなるようである。表情と声を使って感情を表現するため、今どの様に感じているのかがわかるようになっている。

また、一緒にパワーキューブを使ったゲームもできる。特に対戦モードでは、勝てば喜ぶし、負ければ悔しがるというリアクションを返してくれる。

さらには、COZMOの視点で周囲を見ることもできる。これはタブレットやスマートフォンの専用アプリを通してということになるが、自分とは異なる視点で周囲を見られるというのは面白い体験だろう。

このように見てみると、コレまでに発売されてきたペットロボットよりもさらに進化しているように感じる。そしてもう一つ。COZMOはアメリカでは2000年頃から、日本でもようやく最近意識され始めたSTEM教育に対応し、動きをプログラミングができるようになっている。ヴィジュアルプログラミングの「Scratch」を利用できるようにした専用アプリの「Coding Lab」上で、命令文を置き換えた「ブロック」を組み立てることにより動作をプログラムできる。最近ではSONYのaiboもScratchでプログラムができるようになっているが、価格が1桁異なるため、COZMOの方がより手を出しやすい。

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子供にどのような影響を与えるのか

アメリカでも日本でもAI搭載のおもちゃとして人気を博しているCOZMOは、クリスマスに子供に贈りたいプレゼントのトップに挙げられている。では実際にCOZMOを子供にプレゼントすると、一体どのような影響があるのだろうか。

まず真っ先に考えられるのは、情操教育に役立つという点である。COZMOに搭載されたAIは持ち主の言うことを聞くだけではない。自分の感情があるかのように振る舞い、笑ったり怒ったりもするし、時々想定外の動作を見せる。子供もCOZMOのそのような振る舞いに合わせるような対応を取る。まさしくペットと接するのと同じ様な状況が生まれるのだ。実際、病院や介護施設にもセラピー効果があるとして採用されている例もある。

次に視点の切り替えを学べるところも大きい。子供にとって第三者の視点からモノを見るのはハードルが高い。成長に伴って自分以外の視点からの風景や見え方というのが想像できるようになっていくわけだが、それをCOZMOのカメラを使うことで、実際の見え方を知ることができるというのは、幼児期における他者視点の構築のみならず、さらには自分を客観視するのにも役に立つ。

そしてもう少し年齢が高い場合には、それこそSTEM教育用の教材となる。Scratchはヴィジュアルプログラミング言語として、パソコンやタブレットのデュスプレイ上で動作するプログラムを作成するのに使われているが、物理的な操作ができるようになっているロボットはまだまだ数が少ない。COZMOは様々なセンサーを搭載しているものとしては手頃な値段で入手できるため、プログラミング学習のベースとして使い易い。将来プログラマになるかどうかは本人次第だが、子供のうちから様々なことに触れて経験の幅を広げておくことは後々の糧となるため、本人が興味を示すのであれば、情操教育の先にあるものとして、利用すれば良い。

幼児向けAI搭載おもちゃMy Loopyの紹介

COZMOを進化させたAI搭載のおもちゃも増えて来ている。そのうちの一つが2018年にクラウドファンディングサイトKickstarterで出資を募っていた「My Loopy」である。見た目はロボット然としており、幅約8.9cm、高さ約7.6cmと、ほぼCOZMOと同様のサイズだが、タッチセンサー、赤外線近接センサー、光センサー、音センサー、モーションセンサー、傾きセンサー、温度センサーという7つのセンサーを内蔵し、周辺の環境情報を得る。

持ち主との触れ合いで進化していくのもCOZMOと同様だが、4段階が設定されており、最初は音を発するだけでまったく話せない状態から始まる。持ち主が相手をしていくと徐々に多くのフレーズを話すようになる。

またMy Loopy appという専用アプリを利用することでプログラミングすることのできるSTEM教材になる点もCOZMOと同じである。開発元のLocoRobo社では、全年齢対象のSTEM教材として位置付け、小学校以上で利用できるとしている。

心を持ったロボットVector(ベクター)

そしてCOZMOを販売しているAnki社も2018年に新型を発表した。Vectorと名付けられた新型は、見た目は真っ黒なCOZMOである。しかし目の表情、声、動作を組み合わせると1000以上ものパターンが登録されているため、COZMOと比較するとかなり進化していると言える。もちろんCOZMOができていたことはすべて対応している。

それだけではない。Wifiに接続しておけば、話しかけた内容に対してインターネットから情報を収集し答える機能を搭載している。天気予報などを答えてくれるようになっているのだ。これらはGoogle HomeやAmazon EchoのようなAIスピーカーでも対応しているが、同じくVectorに対応している家電製品が存在する場合、AIスピーカーと同じようにスマート家電を操作することもできる。

その他、My Loopyと同じようにタッチセンサーにも対応し、内蔵カメラで写真を撮ることもできるようになっている。aiboやルンバのように自動での充電にも対応した。これによりロボットよりも一層ペットに近づいている。

まとめ

アレルギーなどが原因でペットが飼えない家庭もあるだろうが、COZMOやMy LoopyといったAIを搭載したおもちゃは、ペットの代わりとなって小さな子供達の情操教育を担うことができるようになるかも知れない。

また価格も低価格であり、aiboと比較しても1桁安いために、家庭への導入がしやすくなっている。また一緒に楽しめるゲームも用意され、それに対するリアクションもAIが施御することによって存在しているため、単なるおもちゃロボットとも異なる存在となっている。

さらには年齢が上がれば、センサーや動作をプログラミングできるが故にSTEM教材としても最適である。今後は2020年に小学校においてプログラミング的思考を活用する教育も始まるため、学校現場やプログラミング教室での需要も高まるだろうと考えられる。

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<参考>

  1. AI搭載でここまでかわいい。手のひらロボット『COZMO』がロボット玩具の概念を変える(engadget日本版)
    https://japanese.engadget.com/2017/07/13/ai-cozmo/
  2. AIやIoTが身近なオモチャに! 注目の次世代トイ3選(エンジョイ!マガジン)
    https://enjoy.sso.biglobe.ne.jp/archives/toy/
  3. “今までの玩具とは次元が違うロボット”。人の顔を覚え、AIで感情表現もできる『COZMO』国内発売へ(d.365)
    https://www.digimonostation.jp/0000105238/
  4. 小さな人工知能ロボット「Cozmo」が、子どもにプログラミングを教える“先生”になる(WIRED)
    https://wired.jp/2017/08/02/anki-cozmo-robot/
  5. 「これからのロボット」像を予言する179.99ドルのおもちゃ「Cozmo」(WIRED)
    https://wired.jp/2016/07/27/cozmo-ai-toy/
  6. アップルお墨付き。人工知能ミニカー「Anki Drive」がさらに進化(WIRED)
    https://wired.jp/2014/04/21/anki-new-cars-tracks/
  7. AI(人工知能)搭載の子供へのクリスマスプレゼント人気ロボットランキング2018ベスト10!(Pick J)
    https://storyofthebeginning.com/ai-christmasprezent-ranking/
  8. 人工知能(AI)技術を搭載した小型ロボット【COZMO】 (コズモ)(Scratch日本語版公式サイト)
    https://scratch-japan.com/cozmo/
  9. 話しかけて遊ぶと「成長」する——幼児向けAI機能搭載おもちゃロボット「My Loopy」(fabcross)
    https://fabcross.jp/news/2018/20180622_myloopy.html
  10. COZMOが進化した!さらに賢くなった、心を持ったロボット「Vector(ベクター)」(ドラブロ)
    https://www.doraxdora.com/blog/2018/08/30/post-5803/
  11. 空間視点課題における手がかりの検討(I)(Japanese Journal of Educational Psychology, 1989, 37, 337-344)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/37/4/37_337/_pdf
  12. 幼児期における他者視点取得能力の発達と社会性との関連(川崎医療福祉学会 Vol.  23 No. 1 2013 59-67)
    https://core.ac.uk/download/pdf/51478403.pdf

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